雑記『伊豆大島のハチローさん』

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東京の竹芝から高速ジェット船で約二時間。大島という島がある。

ちょうど先週、一泊二日で行ってきたところだ。もちろん初めてである。

 

一日目は、三原山を登頂したり、元町港周辺のお土産をみたりしていた。近くのスーパーも19時で閉まってしまうので夜の街は暗く、早めにその日の観光を終えた。

 

夕方ごろに立ち寄ったあべもり(お土産屋さん)の店主に、波浮港に向いながら、断層を見学、港に美味しい寿司屋があるからそれを食べて帰りの船の時間までに帰ってきたらいいと教わった。

特に計画もしていなかったので、二日目はその通りにしようと考えた。

 

そして、二日目の午前、波浮港方面のバス停で待っている時、

『波浮港まで行く用事があるから、乗せてってやるよ!』と青のバンに乗ったおじいちゃんに声をかけられた。

後々わかるが、それが、ハチローさんとの出会いである。

 

 

「ほら、バスがくる前に。早く早く」と急かされる。

知らない人の車に乗るのはそりゃあ、怖い。「いやいや…!」と最初は拒んだが、何度も早く乗れと言われるので、流れで乗ってしまった。

乗車しながら、その人物を出来るだけ観察する。サングラスをかけていて、目元はわからないが、見た感じ、島のおじいちゃんだ。80代くらいだろうか…。こちらは、若者二人だからいざとなれば…とまで考えていた。

そんな不安はつゆ知らず、おじいちゃんは語り出す。

 

『昔、タクシーの運転士やっててさ、この辺の道はよく知ってんの。あ、この辺の山でさ、6年前に土砂崩れがあって…その山の上から元町港を見ると、すっごい景色がいいの。そこ連れてくから、降りて写真でも撮りなよ。待ってるからさ』

「え、そんな、申し訳ないですよ!」

『いいのいいの!おじさん、忙しいけど、暇なの!』と、笑う。

現在のバスの観光ルートではない旧道を駆使し、どんどん山を上がっていく。山を上がりながら、大島の歴史を説明しつつ、途中ダジャレも織り交ぜていく。たしかに、プロの仕事だ。タクシーの運転士だったのも多分本当だろう。

そうこうしているうちに、元町港を見下ろせる丘までたどり着いた。

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とても見晴らしがよく風が気持ちいい。と、同時に、周りにはひと気がなかったので、少し不安になる。何かあったらどうしよう…。しかし、おじいちゃんに敵意はなさそうだ。

 

登った山を下り、次に、ダイバーがよく訪れるという海岸に案内してもらった。オフシーズンなので、やはりここもひと気がない。しかし、美しい。

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『この辺さ、石垣が多いでしょ。大島は昔・・島流しがあってさ。流された人が海から石を持って来させられたの。だから多いの』

そう言われてみれば確かに多い。危機感と島への関心がごっちゃになる。

波浮港まではまだまだ遠かった。

 

 

次にたどり着いたのが、地層大切断面である。

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「ほんとだ!バームクーヘンだ!」ときゃっきゃ、うふふ。

ぜひ見たいと思っていたので嬉しかった。

パシャパシャ写真を撮る私たち。その姿を車の中から嬉しそうに見ているのが見えた。

波浮港まで、乗せていく、ということだったが、次々と名所を紹介してくれた。

もうツアーみたいだ。

 

ウミガメのいる海岸

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伊豆の踊り子の舞台になった「みなとや」

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波浮港を一望できる見晴し台

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などなど。要所を観光しながら、ようやく波浮港に到着した。

この時、もう一時間半くらいは一緒にいただろうか。波浮港にも到着したことだし、そろそろお別れだと思っていると・・・

『大島公園通って一周しながら、元町まで行くよ!』と、さらっと、おっしゃる。

「いえいえ!流石に申し訳ないですよ!波浮港に用事があるんですよね。お友達待ってるんですよね?」

『いいんだよ。タイヤがパンクしたとか言っとけば大丈夫だから!』

「え…え、いいんですか…?」

と、またバンに乗る。いよいよ、おじいちゃんの目的がわからないが、でもここまで一緒に過ごして来た時間のおかげでもう恐怖はなかった。(ただただ、申し訳ないと思ってた笑)

 

その後も・・・

 

筆島や、

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冬に花を咲かせるサクラ

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旧学校に繋がる道

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赤禿(あかっぱげ)

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 を周り、気付いたら、無事大島一周を果たしていたのでした!!笑

 

 

 

最後に、元町港に戻り、お礼を言うと同時に聞きたいことがありました。

「あの。お名前はなんておっしゃるんですか…?」

『…さっき、渡した地図にね、名前書いといたんだ。』

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『ハチローっていってね。ほら、8の数字の中に6が入ってるでしょ?』

「かっこいいーー!ほんとだ!ハチローだー!」

 

そして、一緒に写真を撮って、いきなりハチローツアーは終了。 

最初は少し怖かったけど、最後には本当に楽しかった。

ハチローさん、本当にありがとう。

 

 

まとめ 

伊豆半島から大島を眺める機会が今まであったが、「まあ、大きいけど何もないんだろうなー」とぼんやり考えていた。しかし、実際何もなくなんてなかった!

その時の認識と、今の認識がこんなに変わったことが今回嬉しい。

ハチローさんを通してみたものは景色だけではなく、1つの長い人生を見せてもらったような気がする。生きて働いてやってきたこと、喜びや記憶、人との関係。それらすべてが、その人をつくっていく。

あと、大島の自然を見ていたら、定年後、地方に住んで自然に囲まれたいと言う人の気持ちが少しわかった。これもまた発見。

 

そして、最後に、

大島で青のバンに乗ったハチローさんに声をかけられたら、ぜひ勇気をだして乗ってみてほしい。とだけ言っておく。

 

おしまい。